ホットエンド冷却性能比較

【前回の記事】3Dプリンタ用防火エンクロージャーを作る

https://3dpmisosiru.blogspot.com/2021/02/3d.html 

3Dプリンターのエンクロージャー(加熱チャンバー)で印刷を始めた所、ヒートクリープが出るようになってしまった

ひとえにヒートクリープ対策に冷却性能の高いホットエンドが必要である

3D Print Beginnerの記事を参考にするとV6ヒートシンクとバイメタルヒートブレイクの組み合わせが良いらしい

Bi-Metal Heat Break Review – No More Clogs!

https://3dprintbeginner.com/bi-metal-heat-break/

Dragon Hotend vs Copperhead Heat Break + E3D V6 Heat Sink – Temperature Performance

https://3dprintbeginner.com/dragon-hotend-vs-copperhead-v6/

こちらの記事を信用してV6ヒートシンクとバイメタルヒートブレイクだけ買えばいいのだが、Titan AeroやBMG Windも使ってみたかったので気になる奴をいくつか買ってみた

せっかくなので3D Print Beginnerの記事と同様の結果が得られるか再検証してみようと思う


買った物

1、Mellow Titan Aero(E3D Titan Aeroのクローン品)

かっこいい

2、Mellow NF-BMG-Wind Left (BOND TECH BMG ExtruderのクローンをMellowがHemeraっぽくAero化した製品)

左勝手を購入

かっこいい

3、Tryanglelab V6 Hotend(E3D V6 Hotendのクローン)

みんな大好きV6

4、NF-Crazy (Slice Engineering Mosquito Hotendのクローン)


KINGROONから買った

V6程ほど冷えないらしいが一応買ってみた


5、Tryanglela Bi-Metal Heatbreake(Slice Engineering Copperhead Heat Breakのクローン)

ステンレス製オールメタルより性能が高いらしい

Mellow製の方が安かったがTryanglelabの方がしっかり圧入されているとのことでこちらを購入した

温度計測



条件

ノズル温度を240℃に設定して10分後に計測

ヒートブレイクのヒートシンク側5mm地点の壁面を狙って熱電対温度計で計測


ヒートブレイクのヒートシンク側に十分なグリスを塗る

【正規品 親和産業】 ドイツ Thermal Grizzly オーバークロック用特別設計高性能熱伝導グリス Hydronaut 1g

ステンレスヒートブレイクとバイメタルヒートブレイクの温度測定をそれぞれ行う

冷却ファンはそれぞれ最適だと思うものを選び使用する

既設のホットエンドの測定

700円で買ったEnder-3互換のオールメタルホットエンド
庫内温度50℃でABS印刷するとヒートクリープ症状が出る
同じ条件でこちらも温度測定を行い、これを基準としてどれだけ性能向上するのかを見ていきたい

測定結果 56.6℃

今回買ったホットエンドの測定

※順繰りに計測したあと、もう一回組み直して再測定を行い、結果に誤差以上の変化がないことを確認している

1、Titan Aero

ステンレス 40.0℃
バイメタル 36.7℃

2、NF-BMG-Wind

ステンレス 40.3℃
バイメタル 36.6℃

3、V6 Hotend

ステンレス 38.3℃
バイメタル 35.8℃

4、NF-Crazy

ステンレス --.-℃
バイメタル 43.8℃


講評

3D Print Beginnerの記事と概ね同じ結果になった

バイメタルヒートシンクは優秀で、ヒートブレイク1個2000円は高いのだけれどこれだけ効果が高ければ納得せざるを得ない
バイメタルヒートブレイクや本家Copperheadは何種類も売られており、あらゆるプリンターで互換性を保ったままアップグレードをできる点も大きい

V6 Hotendはコスト面においても性能面においても非常に優秀だった
3D Print Beginner元記事においてもV6+Copperhead(バイメタルヒートブレイク)の組み合わせは低コストであらゆる素材の印刷に対応する非常に優れたホットエンドになると結論づけており全くその通りだと思った

Titan AeroやBMG Windも優秀でV6ヒートシンクに迫る性能だ
V6に対してフィラメントパスが短いというハッキリとした利点もある

NF Crazyはヒートブレイクのステンレスパイプと銅ヒートシンクの圧入が弱く、熱伝導が全く期待できない状態であった(力を入れれば素手で動かせるレベル)
実際、結果が今ひとつ振るわないのはそのせいだろう
本物のMosquitoはバーナーで炙った形跡があるので、おそらくはロウ付けのような方法で熱伝導よく接合していると推測できる


MosquitoクローンにはV6と形状互換を持ったDragon Hotendというバージョンも存在し、そちらの比較記事もあった

Dragon Hotend vs Copperhead Heat Break + E3D V6 Heat Sink – Temperature Performance

今回私が行ったNF Crazyの測定とよく似た結果となっており、本物のMosquitoはともかくNF CrazyやDragonを買うのはやめておいたほうが良さそうだ
仮に熱伝導がよくV6+バイメタル同等性能が出たとしてこちらを選択するだけの利点がいまいち見えてこない


印刷テスト

エンクロージャ内でヒーターをガンガン焚いて庫内温度を60℃にキープしてABSを2時間印刷してみた
なお、庫内温度とはエンクロージャーの庫内中心位置の温度を指し、同じ温度値の取れる場所に温度計を設置してコントロールしている
ちなみにヒートベッド近くでヒートシンクファンの吸い込み空気温度は70℃になる






ホットエンドの構成は以下の通り
エクストルーダ:Titan
ヒートシンク:V6
ヒートブレイク:Bi-Metal
ヒーターブロック:CR10
冷却ファン:3010-24v-0.08A

以前のホットエンドであればエンクロージャの扉を開けて庫内温度を35℃以下にキープしないと印刷出来なかった
扉を閉めて更にヒーターまで焚いて60℃キープするという条件で印刷できるのだろうか

テスト結果



結果はとても良好だった
過酷な温度条件で2時間の印刷を完走した
出力品はとてもきれいでヒートクリープの兆候は一切見られない
めでたしめでたし

おわり



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